写真を撮りながら浜を歩く、もしくは浜を歩きながら写真を撮る。
写真を撮るのが目的か歩くのが目的か、はたまた歩いた先にあるとんかつ屋が目的か。おそらく全てが目的であり手段であり日常なのだ。
私にとって写真を撮るということは何か特別なことではなくて、少し気に留めておきたい日常に付箋をぺたりとつけるようなものだろうか。
日常にはやはり小さなカメラがしっくりくる。GRは携行性が高いというだけでなく、凝縮感があって、上品だ。この上品であるという点は非常に重要で、そもそもスナップなんてずかずか歩いて出会い頭に撮影するという全くもってずうずうしいものであるから、せめてカメラには品位を求めたいものだ。
身体の一部のように寄り添ってくれる存在であるGRは、私の眼であり手であり、すでに感覚器官のひとつと化しているのではないかという気持ちになる。
28mmの世界では一歩前に出る勢いが必要で、40mmではややのんびりと目の前の光景を捉える。
つねに写真のことを考えているから、夢の中でも写真を撮っている。10年ほど前は夢の中で写真を撮りたくてもカメラを持っておらずがっかりすることが多かったが、今ではしっかりGRないし別の小型カメラが手に握られている。肝心な写真を現実世界に持ち出せないのが残念ではあるが、夢であろうがカメラを持ち込むことに成功した私だ、いずれ夢の中のハードディスクがいっぱいになったら取り出せるかもしれない。
こんなことを半分本気で思っている私は本当に阿呆だと思う。しかもかなり適当で忘れっぽい。でも、だからこそ何度訪れた場所でもいつでも目の前の光景に飽きもせず感動して写真を撮り続けられるかもしれない、と思ったりする。
カメラも、気持ちも軽く。今日も、明日も、私はいつでも写真を撮っていたいのだ。
大門美奈
横浜出身、茅ヶ崎在住。リコーRING CUBEの公募展をきっかけに写真家となる。作家活動のほかアパレルブランド等とのコラボレーション、またカメラメーカー・ショップ主催の講座・イベント等の講師、雑誌・WEBマガジンなどへの寄稿を行っている。個展・グループ展多数開催。代表作に「本日の箱庭 」・「浜」、同じく写真集に「浜」(赤々舎)など。
www.minadaimon.com