みなさんこんにちは。
アプリ担当の大久保ですが、今回も写真の話です。
GR TVの3回目で大和田良さんが「アンドレ・ケルテス」について詳しく解説されています。GR TVではケルテスの作品は画面に「線と形」があることを大和田さんは指摘されています。
例えば、こちらの「Poughkeepsie, New York(©Andre Kertesz / WIKIART)」を見ると、映っているのは駅のプラットフォームです。
ただ、プラットフォームを意識せずに、遠くを見るように写真全体を俯瞰してみると、階段の壁や屋根がギザギザの矩形に見えて、右のレールもレールではなく白い一本の線といった「線と形」が見えてきます。
その見つけた「線や形」を意識すると、右上にいる白い服を着た人に違和感を持つと思います。すぐ左に屋根があるのですが、人が屋根の下に立っている様に見えません。屋根とホームが同一面に見えますね。
つまり写真から立体感を喪失させることで、立っているポーズなのにホームに寝ているようにも見えるといった、不思議な印象を抱くと思います。
この、どこにでもありそうなシーンだけど、ちょっと不思議な写真を撮るケルテスはモダニズム写真の先駆者といわれています。
では、そのモダニズム写真とはどんな写真でしょうか?
モダニズムは伝統にとらわれない表現を追求する文化運動のことで、1920~30年あたりで興隆しました。
ピクトリアリズム写真は表現としては絵画の延長線上だったのですが、モダニズム写真は写真にしか表現できないことを考えた写真です。先ほどのケルテスのスナップ写真は持ち運べる小型カメラが発明されたからできる表現で、伝統的な絵画手法ではできません。またその表現は、それまでの絵画にはなかった、ちょっと不思議なシュールリアリズムを含んでいるので、モダニズムともいえるわけです。
モダニズムは技術の進化があってできる表現でもあり、報道写真も大いに影響を受けました。LIFE誌の表紙に採用されたマーガレット・バーク=ホワイトの抽象画のようなダムの写真「Fort Peck Dam, Montana 1936(© 2022 The Museum of Modern Art)」もモダニズム写真として有名です。
当時は第一次世界大戦が終わり技術の平和的発展がすさまじく、技術革新で未来はみんな幸せになる世界観がありました。
当時の報道写真は工業と親和性が高く、
・モチーフは重工業の工場や大きなダムやビルなどの構造物
・大量生産を想起させる同じ形状の連続「Margaret Bourke-White Untitled February 1931(© 2022 The Museum of Modern Art)」
・工業製品の特長を表現するのに左右対称のシンメトリーな構図
が多用されました。
、、、とまたもや前置き長くなりましたが、GRでモダニズムな写真を撮ってみたいと思います。
1930年代から90年ほど経過して、どうも世の中は科学技術だけでは世界の問題は解決しないことに気が付いてしまっています。とはいえ、個人的に気になる場所はあります。東京の地下街です。全長は18Kmにもなるそうで、どんどん拡張されています。ここはまだ技術の香りがします。
ということで、日比谷を起点に東京まで歩いてみたいと思います。
日比谷アーケードを初めて見たとき、いつの間にこんな大きな空間を作ったのかと驚かされました。その空間や構造物をモダニズム的に撮ってみようと思います。
写真に人がいると構造物ではなく人に意識が向いてしまうので、人が少ない時間帯に行くことにしました(朝早めです)。モダニズムなのでカメラの機能は積極的に使います。SRはオンでノイズリダクションをしっかりかけ、周辺光量補正もオンです。
F5.6 1/50 ISO1250 GR III
形をしっかり見せるため、絞りは絞りはF5.6~F8.0。コントラスト高めのモノクロである「ハードモノトーン」で仕上げます。明瞭度も強めです。中央の線で左右対称になるように広い「地下空間」を収めてみました。そして、地下はなんといっても「柱」が目立ちます。
F5.6 1/50 ISO1600 GR III
同じ形状である「柱」を3本入れて、やはり「ハードモノトーン」で大きな「柱」の重量感を感じられるようにしました。
F8 1/50 ISO3200 GR III トリミング
ちょっと「線や形」を意識してケルテスっぽく撮ってみました。
ただ、撮っていて気が付いたのですが、ここの「地下空間」と「柱」はカッコいいのです。ここをデザインした人の美意識を感じます。
つまり、情緒を感じてしまうことになり、モダニズムの肝でもある科学技術を感じさせてくれません。もっとデザイン的な要素少な目で、モダンな被写体を探すことにしました。
ということで、一度地上にでて有楽町から東京に向かいます。
F8 1/80 ISO2500 GR IIIx トリミング
高架を支える橋脚ですが、下すぼみで面白い形です。柱でありながら不安定感があり、なかなかシュールです。
F8 1/80 ISO3200 GR IIIx
高架の下側はモダンの塊ですね。
F8 1/50 ISO320 GR III
鉄道の架線柱。ペンキをまとった鉄が産業を支えている感があり、なかなかモダニズムな感じだと思います。
そしてまた地下に潜ります。はやり「柱」が気になってしまいます。
F5.6 1/50 ISO2500 GR III
天井の高さが低く重厚感に欠けますが、レンガの柱は過去の産業へのリスペクトを感じます。日比谷アーケードの柱たちよりデザイン性に乏しいのも高評価です。張り紙が「柱」としての現役感を感じさせてくれます。
別の日にもモダニズムを意識した写真を撮ってみました。
F8 1/250 ISO200 GR III
同じトラックが大量にあると萌えます。
F8 1/320 ISO200 GR IIIx
コンクリートの側溝でしょうか。存在感が何とも言えないです。
いかがでしょうか。
テーマを決めて街を撮り歩くとなかなか楽しいです。
また、意識せずにモダニズムな写真を撮っていることもあると思うので、昔の写真を紐解いてもいいかもしれません。
前回のピクトリアリズムはInstagramで5万枚でした。モダニズム(#modernism)は233万件です。人気がありますね。モダニズム(#modernism)を覗いてみるとモダニズム建築の写真が多いですね。ここはひとつモダニズム写真を増やしたいところです。
皆さんも#grsnapsと一緒にアップしてみてはどうでしょうか。私もアップしていきたいと思います。
また機会がありましたらGRと写真について書ければと思います。
ありがとうございました!
(大久保)