写真の本質の一つは、フォーカス(焦点、集中)にあると思う。
無限に流れる時間、360度に広がる世界のなかで、何にフォーカスし、何をフォーカスから外すのか、その選択が写真になる。
今年、中学生の息子の運動会に、中判フィルムカメラ・ハッセルブラッドを持っていった。フィルム1本で12枚しか撮れない。連写もない。ズームレンズもない。入場行進、短距離走で撮れたのは、それぞれ2枚。本当に撮りたい瞬間にだけシャッターを切った。
結果、丸1日で撮ったのは12枚のみ。だが、満足のいくものとなった。
仮に連写があれば、ズームレンズがあれば、もっと満足する写真が撮れたかと問われれば、そんなことはなかっただろうと答える。
瞬間と被写体にフォーカスし、シャッターを押す。そのシンプルな行為が好きだ。場合によってはテーマにフォーカスする。コミットメントと言い換えてもいいだろう。
GRを使うときも同じ。連写は使わない、露出はマニュアルモード、レンズはもちろん単焦点。同じ被写体を多少違う角度で何枚か撮ったりはするが、撮るものの数は、それほど多くない。
フォーカスし、撮る。「いまここ」にコミットする。そのシンプルさ。
今朝も、夏休みで家にいる息子のために朝食と昼食をつくり、朝の淡い光のなか、GR IIIxで写真を撮り、食卓に置いて仕事に出た。他人にはどう見えるかわからないが、当事者にとってはこの上なく大切な、GR SNAPである。
安達ロベルト(Robert Adachi)
人がどのようにつながり、創造するかに常に関心を持ち、十代で外国語、プログラム言語、絵画を学び、大学で国際法と国際問題を学び、22歳で作曲を始め、32歳のとき独学で写真を始める。GR DIGITAL III、GXR、GRのカタログ写真・公式サンプル写真を担当。「GRコンセプトムービー」の背景に流れるオリジナル音楽を作曲。ファインアートの分野で国内外で受賞多数。主な出版に写真集「Clarity and Precipitation」(arD)がある。
www.robertadachi.com