GR III、GR IIIxにネガフィルム調が加わりました。
以前から、もし「ウチダさん、特別に新しいイメージコントロールを作ってあげます。その代わりに、いただきたいものがありまス、イッヒッヒ」と言われたら、ネガフィルムっぽいトーンがいいなと思ってました。
代わりに何が奪われちゃうか不安だったのに、ファームアップで対応してくれたのはすごく嬉しかったです。

　
というのも九十九里まで自転車で走ったとき、どのイメージコントロールを選んでも思うように撮れなかったから。心情としてネガで撮る感覚を再現したかったけれど、パラメーターまでいじってもビシッと決まりません。
平成までは「昔はそのとき持っているフィルムだけで対応したのだから」と諦めましたが、もう令和。電子レンジがある時代に育って、冷たい弁当を食べるのは辛いもの。

そのときの写真をネガフィルム調でRAW現像しちゃおうかな、と思ったものの、RAWファイルがありません。
「撮影のときその場で感じたことは、後から思い出せるものではない」という信念から、JPEGでしか撮らないのを忘れていたわけじゃないけど。こういうときにRAW現像って最高と思うのかな。

　
写真を撮ることを職業にしているので、もう何度もハワイに行っているけれど、「初めてハワイに行った人みたいに写真を撮ってください」というオーダーには応えられる自信があります。
でも緊急事態宣言のときに見た景色を、そのときの気持ちで撮ってみてくれと言われても難しいはず。
ネガフィルム調の本格運用はこれからにすることで、後から写真を見たときに「ああ、2023年のトーンだよね、あのときの気持ちが写ってる」と思えるようなら最高。

　
内田ユキオ（Yukio Uchida）
1966年 新潟県両津市（現在の佐渡市）生まれ。公務員を経てフリー写真家に。
ライカによるモノクロのスナップから始まり、音楽や文学、映画などからの影響を強く受け、人と街の写真を撮り続けている。執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞などにも寄稿。著書「ライカとモノクロの日々」「いつもカメラが」など。
現在は写真教室の講師、カメラメーカーのセミナーなどでも活動中。
www.yuki187.com/gr-diary