GR IIIとGR IIIxで秋の星空を撮る (かつ)

2024.10.15 BLOG

こんにちは、かつです。

秋の星空を、シーンに合わせてGRIIIとGRIIIxの使い分けをしながら撮影してみました。
2022年10月に紹介した「GR IIIxで撮る星空」と同じ乗鞍畳平エリアにて撮影しています。

以前の記事では、40mmという画角と星空の相性を説明する写真を並べていたので、構図に無理がある部分がありました。
今回は、モチーフとなる星座や撮影地点がほぼ揃っているものの、画角選択肢が増え、構図のとりかたの自由度が増しています。
より「星空のある風景」らしい写真になっていると思いますので、見比べてみるのも面白いかもしれません。

撮影は、2024年9月6日から9月7日をまたぐ夜の写真です。すべて1枚撮りで撮影しています。
星空記事では毎度お伝えしていますが、GR III GR IIIx で星空撮影をする時には、ローパスセレクタ強、手振れ補正OFFをお忘れなく!

GR IIIx 換算71mmクロップ、手振れ補正OFF、F2.8 ISO400 1.6sec露光、RAW現像でトーンカーブと色味を調整しています。

こちらは、他の写真と毛色が異なり、夕方と夜の境界にあたる時間帯に撮影しています。刻々と空の明るさが変化する時間帯ですので、掲載した設定値は参考にならないと思います。

西の空に沈む三日月と金星が近づいているので撮影しました。
月の左上に輝いているのがスピカという星です。金星はV字になった稜線の谷間の上、まだ明るい空に負けずに輝いています。
この夜の月齢はほぼ3です。日本では三日月と呼ばれています。目視ではもっと細く光っているのですが、強い光のため見た目より太く写っています。
月の暗い部分もうっすら光っています。こちらは地球照という現象です。この時間帯ですと目視でもみることができます。
用途によると思いますが、GR IIIxの71mmクロップも中々使えますね。

GR IIIx 換算40mm、ローパスセレクタ強、手振れ補正OFF、F2.8 ISO6400 25sec露光、RAW現像でトーンカーブと色味を調整しています。
LEE No1という弱いソフトフィルターを使い、明るい星(星座)を強調しています。

2022年10月の記事と似たような姿勢になった北斗七星と風景を、GR IIIxの画角40mmの縦構図で撮影しました。

RAW現像によって地上の景色を見た目に近い程度に持ち上げています。
以降の写真も同じですが、こういったシーンでは撮って出しと差が大きくなります。

水が少なくなった池には、北斗七星の右端の星が反射して写っています。
この地点から北の方角は、遠方の街明かりもなく暗いためISO6400を使用しています。
GR IIIシリーズにとっては、ちょっと無理をさせていますが、最近の現像ソフトは程よくノイズを抑えてくれます。
露光時間は25秒と長めですが、北の方角であることから、日周運動による星の流れは他の方角より抑えられています。

この写真のみLEE No1という弱いソフトフィルターを使い明るい星を強調しています。
最近は、星空向けの弱いソフトフィルターが複数ありますので、お好みのものを使うのが良いと思います。
HDFだとどうなるのか興味がありますが、私はまだ使ったことがありません。
星空にHDFの組み合わせは、フィルターが強すぎるのではないかと想像していますが、借りることができたら試してみたいです。

GR III 換算28mm、ローパスセレクタ強、手振れ補正OFF、F2.8 ISO3200 30sec露光、RAW現像でトーンカーブと色味を調整しています。

2022年10月の記事と似たような姿勢の天の川を GR III 換算28mmで撮影しています。
改めて比べてみると、前景との組み合わせや撮影者の意図にもよるのですが、天の川は広角のほうが雰囲気がでますね。
この時は、ISO感度を 3200と抑え気味で撮っていました。しかし、日周運動による星の動きが大きい南の空を撮影しているので、思い切ってISO6400を使いシャッター速度を15秒に抑えた方が良かったと反省しています。

GR III 換算28mm、ローパスセレクタ強、手振れ補正OFF、F2.8 ISO6400 20sec露光、RAW現像でトーンカーブと色味を調整しています。

2022年10月の記事と似たような姿勢の、西に沈む夏の大三角を GR III 換算28mmで撮影しています。
(夏の大三角などの星座の説明は、2022年10月の記事を参照ください)
40mm横位置でもギリギリおさまりますが、星座が画面いっぱいになりすぎます。
おおきな構造のものは、やはり28mmで撮影したほうがおさまりが良いです。

雲のいたずらにより、夏の大三角を構成する3つの星の内、彦星(ドーム左上)と織姫(ドーム右上)の2つの星が強調されています。
雲が抜けきった空よりも、こういった短い時間しか起こらない一合一会の瞬間が星空のある風景写真の醍醐味かなと思います。
少々余談となりますが、このドーム10月初旬に取り壊しが始まったため、もう撮影することができません。
最後の貴重な姿を撮影させて頂きました。

GR IIIx 換算40mm、ローパスセレクタ強、手振れ補正OFF、F2.8 ISO6400 15sec露光、RAW現像でトーンカーブと色味を調整しています。

前の写真と併せ、秋の星空の醍醐味の時間帯。
西側で夏の大三角と地上風景が併せやすくなったとき、東ではオリオン座と地上風景が併せやすい位置になっています。
同じ時間帯に夏と冬を代表する星座が両方撮れるのが秋の良さでしょうか。

2022年10月の記事では、オリオン座が良い位置にあるときを光跡写真で撮影していますが、今回は一枚撮りです。
先ほどの写真の説明でも少し記載していますが、高い雲が通り過ぎたり切れたりしていました(光跡写真には向かない気象条件でした)。
こちらは、丁度雲がほどよく切れたオリオン座がすべて見えた時の写真です。
薄雲が程よく残っていたため、ソフトフィルターを使っていないのに星座が強調されています。
この「天然ソフトフィルター」な状態は、個人的にはとても好きな瞬間です。
画面左上に残った厚めの雲も、一期一会の良いアクセントになっていると思います。

ちなみに、この時間帯よりもう少し後、オリオン座が高くなってきた頃のこの方角。
28mmでは中途半端になってしまうのですが、もっと広角ですと、黄道光と淡い天の川がクロスする様子が撮れたり、超広角や対角魚眼ですと冬のダイヤモンドと呼ばれる構造も併せて撮れます。これからの季節で撮りがいのある星空です。

GR IIIとGR IIIx 画角違いの2台のカメラを合わせてもかなり軽量です。
秋の空では、西と東どちらの景色も同時に撮りたくなったりもします。
ポケットに入るカメラにしては、星空写真もなかなか頑張れる機材ですので、お持ちの機材のプラスワンの候補にして頂けると幸いです。


最後に、直近で皆様の自宅から観測&撮影ができそうな星空情報です!
紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3; Tsuchinshan-ATLAS)が 10/12頃から夕方西の空に見ごろを迎えています。
私も10/13 18:00頃に横浜の自宅からも目視でき、GR IIIx で手持ち撮影することができました。この日はスマートフォンでも撮影できている方が多かったです。
(撮影時は見た目の明るさに合わせましたが、RAW現像で1.5段ほど増感し明るくしています。体感の空は残照がほんのり判る程度で写真より暗く見え、彗星はぼんやりと見えますのでご注意ください。)

GR IIIx 換算40mm, 絞り優先, F2.8換算ISO800, 1/2秒, 手ぶれ補正ありで手持ち撮影。RAW現像で+1.5段ほど増感。1枚目画面左側の明るい星が金星、右側同じ程度の高さに尾を引いているのが彗星、2枚目は彗星部分を等倍近くまで拡大切り出し。

国立天文台(NAOJ)の情報はこちらです。
地球への最接近は既に過ぎていますので、日々小さく暗くなっていくと思いますが、夕方西の空が抜けていれば、今週いっぱいくらいは目視でも観察できそうです。
月末くらいまでは、撮影することもできるでしょう。
金星を基準に探すとすると、私が撮影した日は視線を右に平行するだけでしたが、これからは右上に日々上がっていくことになります。
人生でそう何度も経験できない大彗星ですので、よろしかったら空にご注目ください。

(かつ)

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