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今の家に越してきて初めての冬のこと。あまりに室内が寒いからか、これまでは特別仲が良いわけでも悪いわけでもなく、基本的に別行動であくまでも同居人という関係性だった猫たちが、部屋の隅でさながら陰陽太極図のようにきゅうとくっついて暖をとる姿を見た。これはいけないと思い、これまでなんとなく置いていなかった猫ベッドを導入しようとインターネットでさまざま調べるも、なんとも見た目も含めて良いと思えるものが見つからない。悩んだ末に丸型のクッションのみを購入し、浅草にある籠の問屋さんでそれに合うカゴを手にいれ、即席の猫ベッドとしてリビングに置いた。
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それからしばらくの間猫たちは興味を示さず、ただのオブジェと化していた。けれど冬が終わるころ、ひとりずつではあるがベッドで丸くなる姿を見かけるようになった。ふたりいっぺんに入った姿をみたいという飼い主のエゴもあったけれど、観察しているとどうやらこのベッドはひとり入ったら満席で、ふたりで入るには小さすぎたらしい。
ひとりが入るとそこで数時間を過ごすので、もうひとりは私の膝の上か、そのほか冷えがましなところを見つけて収まる。それでもしびれを切らすと、ベッドにすすすと近づき、占領し爆睡しているひとりをちょいちょいとつついて、追い出すような形で席を勝ち取る。譲り合いというよりは、深夜の見張り番が仮眠している同僚と交代するのをみているようだった。
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夏の間は冷たさを感じられるところで過ごし、また寒くなってくるとベッドに入り始める。このベッドを導入して2回目の冬、例のごとく見張り交代の場面に立ち会った。眺めていると、もともと寝ていたほうが頑なに退けない。その姿勢があまりに頑なだったので、もうひとりは諦めるかと思いきや、なんと半ば強引にベッドに収まったのだ。いや、全然収まっておらず、身体の半分以上がはみ出している。これがはじめてのことだったかはわからない。どちらにせよ、我が子がはじめて立つような感動を覚えた。意外にも、乗られたほうも乗ったほうも居心地悪くはないらしく、それ以来、彼らはさまざま体勢を工夫し、ふたり一緒に寝るのがスタンダードとなった。
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猫たちがベッドに収まる姿と立ち会えたなら、玄関に置いているGRを持ってきて、すぐさま記録している。同じようで毎度体勢が異なり、どちらが上のこともあり、少し目を離して戻ると上下が入れ替わっていたり、片方の顔がどこかわからなかったり、寝てると思いきやしっかりとカメラ目線だったり。もう結構な数になった。これらの写真をどうする予定もないが、彼らがこのベッドに収まる限り、記録を続けていく。
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木村和平
1993年、福島県いわき市生まれ。東京在住。
ファッションや映画、広告の分野で活動しながら、幼少期の体験と現在の生活を行き来するように制作を続けている。
第19回写真1_WALLで審査員奨励賞(姫野希美選)、IMA next #6「Black&White」でグランプリを受賞。主な個展に、2023年「石と桃」(Roll)、2020年「あたらしい窓」(BOOK AND SONS)、主な写真集に、『袖幕』『灯台』(共にaptp)、『あたらしい窓』(赤々舎)など。
Kazuhei Kimura (@kazuheikimura)