こんにちは、あらいたです。
GRシリーズのデザインは、初代の基本的なフォルムを踏襲しながらも少しずつ進化(深化)してまいりました。
その裏には、担当デザイナーの細部に渡るこだわりが数多く反映されています。
今回は、GR IIIのチーフデザイナー稲葉にグリップの革シボデザインについて語ってもらいます。
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こんにちは、総合デザインセンターの稲葉です。
さて、先日インプレスさんから発売されたムック本「RICOH GR III PERFECT GUIDE」はもうご覧頂けたでしょうか?
私もインタビュー形式でGR IIIのデザインについてお話させて頂いたので、ご興味のある方は。。。いやいや、皆さん是非見てください!
その記事の中でグリップの革シボパターンが刷新されたと言う一文がありますが、今回はスピンオフ的にラバー製のグリップに転写されている革シボパターンについてお話してみようかなと思います。
GRシリーズのグリップはGR DIGITAL初代からGR IIまで、業界標準のシボ見本から選んだ同じ革シボパターンを使用し続けています。
今回、GR IIIではグリップ性や使用時の触感を今まで以上に向上させたかったので、全くオリジナルの革シボパターンを新たに作成しました。
上の写真のモックアップに貼り付けてあるものが最終的にチョイスした革シボのパターンです。革シボがテカってるのは握りまくった為ですね。(右上のプレートが通常使用するシボ見本です)
まずは片っ端から革サンプルを探し集めて、その中から可能性がありそうなパターンを選別します。選別した革サンプルは、グリップ性を確かめる為に実際のモックアップに貼り付けて評価をします。滑りにくいのはもちろん、手に汗をかいたりした時にも滑りにくいものが好ましいですね。
よりリアルな革シボパターンを再現する場合、通常は複数の版を使いますが、今回は版の品質が良かった為に1つの版でパターンが再現できました。
今回は実際の革シボのサンプルを直接スキャンして、そのデータから革シボパターンの版を作成して貰いました。パターンが版にきちんと再現されているか簡易的な金型に転写して成形してもらったものが上の写真右下のプレートです。凹凸の状態は左の測定データで確認します。
問題がなければ、プレートのどの部分のシボパターンを部品に使うのか、右上のように指示を出します。この指示したパターンが金型に転写されます(と、簡単に言ってますが曲面上に転写するのは技量が求められる職人技です)
上の写真の左は革シボパターンを転写する前に形状確認したグリップです。右は転写後のグリップになります。部品曲面上に綺麗に革シボパターンが再現されています。(職人さんありがとう)
後日談ですが、GR IIIの試作が出来上がった時に革シボのパターンを見て「フィルム時代のGRっぽいね」と社内で言われました。
GR IIIの革シボパターンは使い込むとパターンの高い部分に僅かに艶が出てくるので、より革らしい質感になってきますよ。
比べてみると全く同じではありませんが、同じ印象を受けますね。
グリップのシボパターンに対する考え方が当時と一緒だったのか、私のセンスが古いのかの判断は皆さんにお任せしますが、道具としてのその部品の機能から導き出すと、同じ様な方向性になるのかもしれませんね。
GR IIIのデザインについて話し出すと永遠と語れてしまうので今回はこの辺で。
最後に最近GR IIIで撮影した夜の渋谷周辺の写真を貼っておきます。
あっ、ちゃんと自前でゲットして使っていますよ!
Av Mode, 1/25sec, F2.8, ISO100, ブリーチバイパス
Av Mode, 0.8sec, F9.0, ISO100, モノトーン
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以上、デザイナー(であり、大のGRファンでもある)稲葉からのメッセージです。
まだまだ、他にも紹介したいこだわりポイントはあるのですが、それはまたの機会に...。
(あらいた)